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建設業者が決算書で見るべきポイントはどこ?経営分析に役立つ注目項目とは

建設業を営む企業や個人事業主にとって、決算書は単なる会計報告書ではなく、経営判断や資金繰り、さらには公共工事の入札参加などにも大きく関わる重要な書類です。しかし、「決算書を税理士に任せきりで、内容をきちんと見たことがない」「数字の見方がわからない」といった声も多く、正しく活用できていない事業者も少なくありません。

特に建設業では、建設業許可の更新や経営事項審査(経審)など、行政との関係も深いため、決算書の内容を正確に把握し、必要に応じて整備しておくことが非常に重要です。この記事では、建設業者が決算書で注目すべき主要ポイントとその理由、誤解しやすい点、実務での注意事項、そして士業のサポート内容について、実務に即した形で詳しく解説します。

まず確認すべきは「自己資本比率」「利益率」「完成工事高」

建設業者がまず目を通すべき重要な項目は以下の通りです。

  1. 自己資本比率(貸借対照表より)
     企業の安定性・健全性を示す指標です。総資産に対して純資産が占める割合で、一般的には20%以上が望ましいとされています。建設業では、金融機関や元請会社が企業の体力を見る際に注目する数値です。
  2. 利益率(営業利益率・経常利益率)(損益計算書より)
     本業によってどれだけ利益が出ているかを示す数値です。営業利益率は売上高に対する営業利益の割合で、経常利益率はさらに営業外収益や費用を加味したもの。業界平均を把握し、自社と比較することも有効です。
  3. 完成工事高(損益計算書より)
     建設業における売上にあたるもので、工事が完成した時点で計上されます。元請・下請別、公共・民間別、工事種別ごとの内訳も分析対象となり、売上構造の理解に役立ちます。

これらの指標は、経営状況の「全体像」をつかむために欠かせないポイントであり、金融機関の融資判断や、公共工事への参加資格の評価基準としても活用されます。

なぜこれらの数値が建設業では特に重要なのか

建設業では、工事の請負契約が長期に及ぶことが多く、収益認識の方法や資金の回収時期に特徴があります。そのため、他業種以上にキャッシュフローと収益性のバランスが重要になります。

たとえば、自己資本比率が低いと、赤字が続いた際に債務超過に陥るリスクが高くなり、金融機関からの融資が受けにくくなる可能性があります。また、利益率が極端に低いと、いくら売上が大きくても手元に資金が残らず、資金繰りが厳しくなる事例も多くあります。

さらに、完成工事高は単なる売上高ではなく、受注の偏りや業種・業態の変化を読み取る材料にもなります。たとえば、特定の得意先に依存しすぎていないか、工事種別に偏りがないかなどを検討する際に役立ちます。

よくある誤解と落とし穴:「黒字なら安心」は危険

「黒字だから問題ない」と考えている事業者も多いですが、それは大きな誤解です。建設業では、工事完了から代金回収までにタイムラグがあることが一般的であり、帳簿上は黒字でも、実際の現金が不足している“黒字倒産”のリスクもあります。

たとえば、貸借対照表の「売掛金」「未成工事受入金」や「工事未収入金」が過大な場合、回収が進まなければ資金ショートにつながります。また、「棚卸資産(仕掛工事)」が増加している場合も、工事が長期化している可能性があるため注意が必要です。

さらに、建設業では元請や公共工事発注者から、財務の健全性が厳しくチェックされることもあります。単なる会計上の黒字ではなく、実態に即した財務内容であることが求められます。

建設業許可・経審と決算書の密接な関係

建設業許可を取得している事業者は、毎年、決算終了後に「決算変更届(事業年度終了報告)」を提出する義務があります。この際、決算書の数値が正確であること、建設業会計の形式に沿って作成されていることが重要です。

さらに、公共工事の入札を希望する場合には、「経営事項審査(経審)」の受審が必要です。ここでは決算書の内容をもとに、「経営状況分析」が行われ、自己資本、利益、キャッシュフローなどが総合的に点数化されます。これにより「総合評定値(P点)」が算出され、入札ランクや発注金額の上限に影響します。

つまり、決算書は単なる帳簿ではなく、「営業活動の評価書」でもあり、「営業戦略の武器」でもあるのです。

士業によるサポートで数字の信頼性を高める

決算書を正しく作成・活用するためには、以下のような専門家の支援を活用するのが効果的です。

  • 税理士:決算書の作成や節税対策の助言を行います。
  • 行政書士:建設業許可の取得・更新、決算変更届や経営事項審査の申請書類の作成を行います。決算書と行政書類の整合性を保つ役割を担います。

税理士と行政書士の連携により、決算書と許可関係書類に一貫性を持たせることができ、行政対応や融資審査にも有利に働きます。

まとめ:決算書は「読む力」と「活かす力」が重要

建設業者が経営を安定させ、発展させていくためには、決算書を単なる提出書類として捉えるのではなく、「経営を読み解くための道具」として活用する視点が不可欠です。特に自己資本比率や利益率、完成工事高といった主要指標は、経営状況を客観的に評価するうえでの基本です。

「数字は苦手だから」と避けるのではなく、専門家の支援を受けながら、定期的に決算書を見直す習慣をつけることが、長期的な安定経営への第一歩となります。まずは、毎年の決算書を「自分の言葉で説明できる」ようになることを目指してみてはいかがでしょうか。

著者情報

長野県行政書士会所属 登録番号 第22152711号

長野県茅野市北山6770番地

行政書士あさくら事務所

代表行政書士 朝倉祐作

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