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完成工事高が急減すると経審に影響するのか?制度の仕組みと対応策を徹底解説

建設業者にとって、「経営事項審査(経審)」は公共工事を受注するうえで欠かせない審査制度です。その中でも「完成工事高」は、企業の経営規模や実績を示す重要な指標として扱われています。しかし、「最近、工事量が減って売上が落ちてしまった」「決算期に工事が完了しなかった」というケースは珍しくありません。そうした状況で、「完成工事高が急減すると経審にどれほど影響するのか?」と不安に感じる方も多いでしょう。

この記事では、完成工事高が急減した場合に経審にどのような影響を及ぼすのか、その理由や評価方法、実務上の注意点、そして専門家によるサポート内容まで、分かりやすく丁寧に解説します。

結論:完成工事高の急激な減少は経審の点数に直接的な悪影響を及ぼす

経営事項審査においては、「総合評定値(いわゆるP点)」というスコアが企業の格付けとして使われます。このP点は、さまざまな要素で構成されていますが、そのうち「完成工事高」は「経営規模等評価(X点)」の構成要素として評価される項目です。

完成工事高が急減すると、「X1(完成工事高評点)」の点数が下がり、結果的にP点全体が大きく減少する可能性があります。P点が下がれば、入札での競争力が低下し、受注したい規模の公共工事の受注機会を失うリスクも高まります。

完成工事高とは?どのように評価されるのか

完成工事高とは、1年間(原則は直近の事業年度)において完了した工事の売上高を指します。この完成工事高は、業種(工種)ごとに集計され、「建築一式工事」や「土木一式工事」といった分類で評価されます。

経営事項審査での評価方法は次のようになります:

  • 評価対象は原則、直近1年分の完成工事高(事業年度終了の日の属する年度)
  • 工種別に分類し、それぞれについて評価
  • 完成工事高の金額を一定の係数でスコア化
  • 評価期間中の合計売上に応じて点数が算出される

このため、同じ建設業者であっても、業種ごとに工事量が少なければその業種に関するX1点数は低くなり、総合評価にも影響が出ます。

完成工事高の減少がもたらす影響とは

完成工事高が前年と比べて急減した場合、以下のような悪影響が考えられます。

  1. P点の大幅な低下
     総合評定値(P点)は、公共工事の入札参加条件にも関わってきます。多くの自治体では「建設業者の格付け」を行い、入札できる工事の規模の制限を設けており、点数が大幅に下がれば参加自体が困難になります。
  2. 競争上の不利
     同業他社との比較において、完成工事高が高い企業ほど「施工能力がある」と評価されやすくなります。逆に、完成工事高が低いと施工実績の乏しさが懸念され、入札において不利な立場になります。
  3. 金融機関からの評価にも影響
     完成工事高は経営状況を示す客観的な指標でもあるため、金融機関の融資判断にも関係することがあります。

よくある誤解:完成工事高の一時的な減少なら問題ない?

「一時的な売上の減少くらいなら、それほど影響しないだろう」という考え方は誤解です。経審の評価は直近1年間の数値に基づくため、たとえ一時的な減少であっても、対象年度の評価点には直接的に反映されます。

また、複数年にわたって完成工事高が減少傾向にある場合、業績の悪化と見なされ、企業としての信頼性や施工能力に疑問が持たれる可能性もあります。

実務での注意点:決算と工事スケジュールの管理が重要

完成工事高の評価には「いつ工事が完了したか(完成のタイミング)」が重要です。よって、以下のような実務管理が経審に大きく影響を与えることになります。

  • 決算前の工事完了スケジュール:決算直前に工事が終わる予定だったが、天候や人員の都合で遅れた場合、完成工事高に計上できなくなり、評価が下がります。
  • 大型案件の集中リスク:特定の年度に大型案件が偏ると、その翌年度に完成工事高が大きく減少し、経審の点数も不安定になります。

これらを避けるには、長期的な案件の進捗管理や決算時期の見直しなど、計画的な経営戦略が必要です。

専門家ができる支援とは?行政書士の役割

完成工事高の管理や経審対策は、単なる書類作成ではなく「戦略的経営」の一環です。行政書士などの専門家は、以下のような支援を行います。

  • 経審評点の試算やシミュレーション
  • 完成工事高や他の要素(利益率・自己資本比率等)を活かした点数バランスの提案
  • 工事スケジュールの見直し支援
  • 業種の選定(総合評価のための得意分野の見極め)

特に、完成工事高が減少している状況では、「どう他の項目でカバーするか」「来期に向けて何を準備すべきか」といったアドバイスが非常に重要です。

まとめ:完成工事高の急減は経審に大きな影響を与えるため早めの対策を

完成工事高は、経営事項審査における非常に重要な指標であり、その急激な減少は企業評価に直結します。売上の減少は経審の点数低下を招き、結果として公共工事の受注機会の喪失や経営上の不利益につながることもあります。

そのため、日々の工事進捗管理、決算処理のタイミング、そして中長期的な受注計画を意識した経営が不可欠です。完成工事高が下がってしまった場合でも、他の評価項目とのバランスや次年度への備えでリカバリーは可能です。

必要に応じて、早めに行政書士などの専門家へ相談し、点数改善や経審対策を講じることで、安定した公共工事受注への道を開くことができます。

著者情報

長野県行政書士会所属 登録番号 第22152711号

長野県茅野市北山6770番地

行政書士あさくら事務所

代表行政書士 朝倉祐作

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